「裏庭」の評論

1994
年 第19回「視点」 準視点賞





「視点」賞をめぐって

若橋一三 丹念に、しかも撮るものをよく選んで撮っています。よく見ますと決して簡単に撮っているわけではなくて時間を変えたり、被写体に寄ったり引いたり、ひとつひとつねらいを持って撮っています。執着を持って撮っている点に注目したいですね。

現在の使い捨て社会、使い終わったら他人の迷惑もかまわず、空き地なり雑木林なりに捨ててしまう人間の増長ぶりが表されています。その意味で反省もさせられ、日本の現実が浮かび上がってきます。

枚数は多いんですが、これだけの枚数を積み重ねていくことによって、作者の主張がより鮮明に表現できてるんじゃないかと思います。

川島 浩 ディスタンスを変えたりして工夫するといった構成力はあるけれど、見ていてくたびれてしまう。カラーだからよけいくたびれてしまいます。うまい人ですが。

丹野 章 たしかにテクニカルなところもわかるし、うまい人ですね。10枚で見せているが、この方法では、これでなきゃ見せられないですね。ある程度枚数がなければ見せられないというこのやり方、発想の根本のところにもうちょっと工夫が必要なんじゃないかな。枚数を積み上げていけば強くなるという方法論に限界があるように感じます。

神山洋一 光線の見方のうまい人です。光線をうまく利用して廃棄物を浮かび上がらせていてうまい映像にしていると思います。迫力もあって。

増田れい子 これが日本なんだな。それを表現したという点で評価します。

藤本四八 これは地方の人がゴミ問題を扱ったものです。これも日本の現実ですね。光の扱い方もいいし絞り方もいいし、ただ、枚数が多いのが欠点ですが。

翌年の1995年、個展「裏庭」を東京神田の平永町橋ギャラリーで開催しました。須田一政氏の経営する小さな私設ギャラリーでしたが、著名な写真家の集まる熱気に溢れた場所でした。片田舎の無名のアマチュアの写真展を、快く開催させていただき、大変ありがたかったのを憶えています。私の東京での活動の原点となる場所ですが、今は閉鎖されてしまい、大変残念に思っています。

個展「裏庭」はこちらをごらんください。

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